(1) 2回目の過越祭(1~4節)
「エジプトの国を出た翌年の第一の月」、主なる神は「シナイの荒れ野」でモーセに(1節)、「イスラエルの人々は定められた時に過越祭を祝わねばならない」と命じられた(2節)。
過越祭はエジプトで起こった過越の出来事を再現している。主なる神はエジプトに初子の死という災いを下すことをイスラエルに告げられた(出エジプト記12章12節)。そして、小羊を屠って、その血を「家の入り口の二本の柱と鴨居に塗る」ならば(同6~7節)、初子の死を免れると語られた(同13節)。また、その時、家の中で屠った小羊の肉、酵母を入れないパン、苦菜を食べるよう命じられた(同8節)。その晩、エジプトの全ての初子が死んだが(同29節)、小羊の血が塗られたイスラエルの家には死が過ぎ越して行った。その結果、イスラエルはエジプトの奴隷の身分から解放された(同31節)。
過越祭はイスラエルが初子の死という災いから救われた出来事を記念する祭りである。だから、それは毎年繰り返されなければならなかった。荒れ野を歩んでいる間も、彼らは主なる神の恵みを決して忘れることなく、しっかりと握り締めて、進まなければならなかった。過越祭を行うことによって、イスラエルの民は、救われた恵みを想い起こし、主なる神に感謝し、神の民としてのアイデンティティを維持した。
イエス・キリストが十字架で死なれたことは一つの過越である。過越の小羊であられるイエス・キリストを通して、私達は救いに与ることが出来た。イエス・キリストは、弟子達に、そして教会に、パンと杯を受ける〈主の晩餐〉を「わたしの記念として」行い(ルカによる福音書22章19節)、救われた恵みを心に刻むよう命じられた。救いの出来事は一回きりであるが、その恵みは受け継がれていかなければならない。
(2) 月遅れの過越祭の規定(5~14節)
イスラエルの民は「第一の月の十四日の夕暮れ」に「シナイの荒れ野」で過越祭を「すべて主がモーセに命じられたとおり」に祝った(5節)。その日を人が任意に変えることは出来なかった。
一方、その日、過越祭を祝うことが出来なかった人達がいた。律法によると、「重い皮膚病にかかっている者、漏出のある者、死体に触れて汚れた者」は、汚れた状態にあり、一定期間「宿営の外に」隔離され、祭儀に参加することも出来なかった(5章2節)。そのため、「人の死体に触れて汚れた者たち」がモーセとアロンの前にやって来て(6節)、過越の献げ物をささげたいと願い出た(7節)。
彼らの訴えを聞いた後、モーセは自分で判断することをせず、主なる神にその問題を持って行き、主なる神に判断を委ねた(8節)。
義は主なる神にある。主なる神の御前に謙り、主なる神に頼って生きることは、どのような立場であれ、神の民に求められていることである。
主なる神は、「死体に触れて汚れている者」も「遠く旅に出ている者」も「主の過越祭を祝うことができる」とお答えになった(10節)。そればかりか、「汚れているのでもなく、旅に出ているのでもなくて過越祭を祝わない者があれば、その者は自分の民から断たれる」とさえ言われた(13節)。
過越祭は主なる神の救いを記念する日なので、彼らは必ずこの祭りを守らなければならなかった。過越祭を忘れることは、神の民としてのアイデンティティを失うことを意味した。救いの恵みを軽んじるなら、神の民として生きることは出来ない。主なる神の救いを覚えることは、神の民であることのしるしである。
その上で、主なる神は、「第一の月の十四日の夕暮れ」に守れなかった人のために、「第二の月の十四日の夕暮れ」に過越祭を行うことを定められた(11節)。1か月遅れではあるが、方法と内容に違いはなかった(11~12節)。イスラエルの民は過越祭を通して神の民の一員であることを確認した。
更に、主なる神は、イスラエルの民のもとに「寄留する者が、主のために過越祭を祝おうとするならば、過越祭の掟と法に従って祝わねばならない」と言われた(14節)。主なる神は全人類が罪の赦しを受け、命を得ることを願われる。そして、主なる神がモーセに「この掟は寄留者に対しても、その土地に生まれた者に対しても、あなたたちに等しく適用される」とお語りになったように(14節)、新約の時代においても、民族は違っても救われる方法は同じである。全ての民族はイエス・キリストを主と信じることによってのみ救われる(使徒言行録4章10~12節)。
人生には色々なことが起こる。しかし、主なる神の救いは揺るがない。それが私達の希望である。いつもイエス・キリストを仰ぎつつ、救われた喜びをもって毎日を生きていこう。そして、主なる神の恵みは共に分かち合うことによって一層豊かになる。主なる神は私達が救いの恵みを隣人と共に分かち合うことを願っておられる。
西原新生バプテスト教会
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