山中 良知「カルヴァンの『キリスト教綱要』における神認識と自己認識について――有神的認識論序説」橋本 龍三, 春名 純人編『カルヴァンを継ぐもの』日本カルヴィニスト協会二十周年記念論文集; 1, 東京: すぐ書房, 1978年, pp.108-109
「さて、カルヴァンは、神認識によらない人間の自己認識は真実なものとならないし、また自己認識のない神認識は具体的内容をもたないと主張する。換言すれば、神認識への上昇は、自己認識への下降をともない、自己認識への下降は神認識への上昇をともなう仕組について述べている。人間の被造性と罪からくる脆弱、卑小、悲惨、虚妄の自覚の奥底においても、その思惟の純化徹底と深化を求める度合は、神を礼拝し、畏れ、敬い、愛し、服従することの熱心さの度合に比例する。逆に、神を知り、神の意志の認識に当らない人間の思惟のあり方は、的に当らない矢のようにすべて主観内の袋路と同じである」