一色 哲『南島キリスト教史入門――奄美・沖縄・宮古・八重山の近代と福音主義信仰の交流と越境』シリーズ神学への船出; 04, 東京: 新教出版社, 2018年, p.79
「こうして、読谷山の集会が一度に多くの受洗者を生みだした背景には、長年、小学校の校長として地域社会の尊敬を集めてきた比嘉保彦の人格的要素も大きかった。このとき受洗した人びとの多くは教育を受ける余裕がなかった階層の人びとであった。そこで、比嘉は、信徒や集会の参加者に対して、ひとりでも聖書を読みながら信仰を養うことができるようにと、集会後、石板を持ち出して、文字の読み書きを教え始めた。それに応えて、信徒・求道者たちは、一生懸命に文字と共通語の学習に励んだという。
ところで、当時の集会は、参加者が昼間の労働を終えた夜間に持たれた。参加者は、角ランプを下げて二、三人で連れ立って比嘉宅に集まり、一〇〇名余りの集会を夜半まで続けた。集められた何十もの角ランプの明かりに照らされながら、人びとが深い祈りを献げていた様子が目に浮かぶようだ」